大判例

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前橋家庭裁判所高崎支部 昭和44年(家イ)2号 審判

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔要旨〕相手方は肩書本籍地において出生し、小学校卒業後○○市内で理髪業に従事していたが、昭和一六年上京し、東京市本所区○○○町の理髪店に勤務している中、客として来ていた本籍申立人に同じの韓国籍を有する亡甲男と知り合い、○○○町所在のアパートで同棲生活に入つた。昭和二〇年三月戦災の為住居が焼失し、生命の危険を感じたので、同年五月同人の本国である朝鮮へ一緒に帰国して同人と事実上の婚姻関係を続け、昭和二五年五月その間に申立人が出生した。ところで甲男には既に正式の妻乙女と子が有り、妻子とは別居生活をしていたが、甲男は同年同月下旬申立人を妻との間に出生した嫡出子として出生届をした結果、戸籍にはそのように登載されている。甲男は昭和三五年九月死亡したので、相手方は同人との間に生れた申立人とその弟二人を連れて帰国し、その後申立人らを養育して今日に至つたのである。右のように申立人は真実は相手方の子であるにも拘らず母子関係が戸籍上不明であるので、その確認を求めるというのである。

二、以上の如く本件が渉外的要素を含むところから、先ず本件につき当裁判所が裁判権(国際的管轄権)を有するかどうかを検討する。

調査の結果によれば、申立人主張の前記事実を認めることができるが、それによれば昭和二五年五月日本人たる相手方が申立人を分娩したというのであるから、この事実によつて日本法上当然に申立人と相手方との間に母子関係が発生したのであり、当時の日本国籍法第三条により申立人は一旦日本の国籍を取得したといわねばならない。

次に甲男が韓国において申立人を妻との間に生れた子として出生届をしたのは昭和二五年五月であるから、日本統治下の朝鮮民事令、日本国民法(旧法)が未だ廃止されることなくその効力を有していたのであるが、当時韓国人たる甲男が日本人たる申立人を妻との間の嫡出子として出生届をしたことが認知の効力を有するか否かについては、当時の韓国国際私法規定によつてその準拠法を定めるべきところ、その内容が詳かでないけれども、之についても日本の法例の原則が適用されたものと推測し得るのであつて(一九六二年施行の韓国渉外私法第二〇条(認知)の規定は日本の法例第一八条(認知)の規定と全く同一である)、これにより、婚外子たる申立人を認知するについては父及び子の当時の各本国法たる韓国法及び日本民法(その内容は結局同じである)が結合的に適用される結果、甲男が申立人を妻との間に生れた子として届出たことを認知の効力を有するものと認められ、申立人は之によつて韓国籍を取得すると共に、当時の(旧)日本国籍法第二三条により、日本国籍を喪失したものというべきである。

かように韓国籍を有する申立人と日本国籍を有する相手方との間の渉外親子関係確認事件の国際裁判管轄権については当事者の住所を基準として之を決定すべきところ、いずれも日本国内に住所を有するので日本国裁判所がその裁判権(国際管轄権)を有することとなるが、本件は調停における合意を基礎として合意相当の審判を求めるものであるから、家事審判規則第一二九条により相手方の住所地を管轄する当裁判所が本件につき国内管轄権を有するのである。

三、よつて本案につき判断を進める。

婚外親子関係成否の問題についての準拠法いかんというに、法例第一八条が婚外親子関係一般の成立の問題に通ずる準則と解されているところから、同条の規定の趣旨に従い、親子関係発生の原因たるべき事実の発生した当時における各当事者の本国法ということになる。そうすると申立人出生当時の日本国民法と当時の韓国法とが結合的に適用されるべきであるが、我が民法において、母子関係は分娩の事実により当然に成立するものと解すべく、韓国法もこの問題につき同様の取扱をしていると推測されるので、前掲の事実によれば、申立人と相手方との間に法律上の母子関係が存在するものということができる。(小西高秀)

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